デジタルアーカイブ研究情報

モーションキャプチャについて

2013年03月18日
モーションキャプチャとは
モーションキャプチャは身体各部の座標を計測し、身体動作を3次元時系列として客観的に表すテクノロジーです。それにより計測されたデータをモーションデータと呼びます。現在、モーションキャプチャのシステムは大きく分けて3種類に分類できます。
一つは、光学式と呼ばれるシステムで、身体に何十か所かのマーカーをつけ、それを複数台のカメラで撮影して、位置を計測します。
もう一つは磁気式と呼ばれるシステムで、身体に磁気センサーを取り付け、そのセンサーの位置・回転を測定することで身体の動きを計測するシステムです。
三つ目は機械式と呼ばれ、文字通り身体に測定機械を取り付けて計測するシステムです。直接動作を計測できますが、これまでは身体に機械を取り付けるため激しい動作はできませんでした。
どのシステムにも一長一短があり、どれが優れているということはありません。 また最近では技術の進歩により新しいモーションキャプチャのシステムも開発されつつあります。

 
 磁気式モーションキャプチャについて 
 
東北大学大学院教育情報学研究部渡部信一研究室「伝統芸能デジタル化プロジェクト」(以下、「伝統芸能デジタル化プロジェクト」と表記します)では、2種類のモーションキャプチャシステムを用いています。
1つは、磁気式モーションキャプチャであるアセンション・テクノロジー社(Ascension Technology Corporation)のモーションスター・ワイアレス(MotionStar Wireless)です。
このシステムは、磁界を発生するトランスミッタ、対象に装着するセンサー、データを収集し無線LANで送信するバックパック、データを受け取り位置姿勢データに変換してコンピュータに出力するモーションキャプチャサーバから構成されています。
伝統芸能デジタル化プロジェクトでは位置情報と、回転情報を計測できるセンサーを対象者の身体の11箇所(頭部・胸部・右腕・右手甲・左腕・左手甲・腰部・右腿・左腿・右踵上部・左踵上部)に装着して計測を行ったケースが多いです。これは、人間の体が15の剛体とそれをつなげる関節で構成されていると考えれば、11か所の身体の各部につけたセンサーの位置座標と回転角を計測することで、センサーをつけていない剛体部分の動きも推測でき、身体の動きを再現可能だからです。





    磁気式モーションキャプチャの様子
     
磁気式モーションキャプチャのシステム図



 慣性センサ式モーションキャプチャについて 

光学式モーションキャプチャや、磁気式モーションキャプチャは、精度も高く非常にリアルに人間の動作を再現できます。しかし、また、例えば光学式モーションキャプチャならば、専用の服を着て身体中にマーカーをつけなければなりません。磁気式モーションキャプチャでも、身体各部にセンサーを取り付ける必要があるため衣装に制限があります。さらに、モーションキャプチャは装置が大規模でありどこにでも移動できるものではなく、基本的には専用のスタジオで撮影を行わなければならないなど制約が多いのも事実です。また、モーションキャプチャは専門的な装置であり、テクノロジーに詳しくない者が簡単に扱えるものではありません。したがって伝統芸能デジタル化プロジェクトでも、対象者にモーションキャプチャ・スタジオまで出向いてもらい、専門のスタッフによってモーションキャプチャを行っています。 



慣性センサ式モーションキャプチャMVN
システム図





モーションキャプチャの様子
しかしながら、芸能毎に毎回、対象者にスタジオまで出向いてもらうと言うことは、時間的にも金銭的にも厳しい部分があります。そこで、より手軽にモーションキャプチャによるデータを取得するために、伝統芸能デジタル化プロジェクトでは慣性センサを用いた方式であるXsens社のMVNモーションキャプチャシステムも用いています。MVNは、高精度MEMS慣性センサーを17個を搭載したフルボディスーツを着ることで身体動作を取得するモーションキャプチャシステムです。(光学式・磁気式・機械式に分類するとすれば機械式にあたるかと思いますがこれまでにないモーションキャプチャのシステムであるとも言うことができます。)
MVNの大きな特徴は、セットアップに時間がかからないこと、そしてどこでも計測可能なこと、比較的小さく持ち運びできることです。これらの特徴を生かせば、これまで計測困難であった動作を計測することができますし、伝統芸能が継承される現場に持ち運んでモーションキャプチャすることが可能となります。
したがってより多くの芸能をアーカイブすることができるようになっています。
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