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宮城県に伝わる伝統芸能について

2013年05月22日

宮城県の伝統芸能の継承団体は約400団体あるとのことで、県下全域で様々な芸能が伝承されています。
ここでは、宮城県の伝統芸能について簡単に説明します。

1 神楽

神楽も大別すると、巫女神楽・出雲流神楽・伊勢流神楽・獅子神楽に分類できますが、宮城県で継承される神楽の多くは出雲流神楽に分類されると言われます。出雲流神楽は、採物の舞と演劇的な能からなる神楽です。
宮城県の神楽をさらに分類すると「法印神楽」「岩戸神楽」「南部神楽」に分けられます。

1.1 法印神楽
宮城県北東部、特に沿岸の地域を中心に伝承されている神楽です。もともとは法印たちが演じてきた神楽で陸中発祥と言われていますが、現在では宮城県だけに伝わる神楽です。「雄勝法印神楽」(石巻市)が全国的に有名です。
「初矢」「道祖」等の神話を主とした能を演じ、各団体10数目を伝承しています。大乗飾りなどを下げ回した二間四方の仮設の舞台で、比較的大きな仮面をつけて剣を振り回したりする勇壮な舞が多いです。

   
上町法印神楽(登米市) 雄勝法印神楽(石巻市) 


1.2 岩戸神楽
仙台市から県南部に広く行われている神楽です。十二座神楽・十二神楽・榊神楽・蔵王神楽等と称しています。社家と修験団によって伝承されてきました。
12の演目を持ち、詞章もなく、舞手も音をたてないように舞います。演劇的な要素が少なく祈祷の舞型で全て舞われます。楽は笛と大拍子と大太鼓で奏されます。

   
塩釜神楽(塩釜市)  熊野堂神楽(名取市)


1.3 南部神楽
幕末のころ、岩手県南部で発祥したと言われている民衆の神楽です。宮城県では「南部神楽」と言いますが、岩手県では「セリフ神楽」「栗原神楽」「仙台神楽」等と呼ばれます。「南部神楽」は明治政府の神仏分離令前から民衆によってつくりあげられてきた神楽です。だんたんと大衆向きに娯楽性を強くしてきた農民たちの神楽で全国的にも珍しいものです。
南部神楽の源流は、演目はじめ衣装や道具などから岩手県に広く分布する山伏神楽であると言われています。演目としては山伏神楽の流れを汲む舞の他、劇舞という奥浄瑠璃や説話をもとにした芝居のような舞を演じます。

   
 中野神楽(栗原市)  嵯峨立神楽(登米市) 


2 田植踊

日本各地には田楽や御田植等を呼ばれる神事を行う寺社が数多くあります。しかし、宮城県の田植踊は庶民の芸能として伝承されてきたもののようです。
田植踊りは早乙女が稲刈りの様子を演じることで田の神への豊作祈願をしたものです。古くは故障月のころに行われたと言い、部落を歩いて回ったり、他の部落へ呼ばれて舞ったりとしていたようですが、現在は春の神社の例祭等で舞われることが多いです。早乙女とよばれる舞手ももともとは男性でしたが、現在では女性が舞っているところがほとんどです。早乙女は花笠をかぶり振袖に赤いたすきをかけて、広帯をしめ、手甲、脚袢、白足袋姿で踊ります。早乙女の他に弥十郎よ呼ばれる役もいますが、弥十郎は各団体ごと若干異なった形をしています。仙台市秋保近辺に伝わる田植踊が有名です。 
 
秋保(湯元)の田植踊(仙台市)



3 その他

3.1 獅子舞
全国に広く見られる獅子舞ですが、神楽の中で舞われる神楽系のものと、そうでないもの(風流系)があります。宮城県で風流系のものは、石巻市とその周辺にかたまって伝承されています。その他、神楽系のものや神社の祭礼で舞われるものなどがあり、150組以上あるそうです。


3.2 虎舞

気仙沼市や南三陸町、登米市に伝わる芸能で、岩手県陸中海岸沿いに見られる虎舞と同系のものと言われます。海岸沿いでは「虎は千里行って千里帰る」と言われることから、漁に出て無事に帰って来られるようにという願いと、大漁祈願をこめて舞われたようです。内陸部では、民家の屋根に上って火伏の祭りとして舞われています。


3.3 鹿踊と剣舞
長い腰丈を背負った八頭立ての「八つ鹿踊」と、そうでない六~十二頭立ての鹿踊りがあります。どちらも、腰につけた太鼓を打ちならしながら舞います。多くは鹿にまつわる伝承を持ち、領主等から特別に紋をつけて舞うことを許可されたといった言い伝えがあり、先祖の供養や健康を祈って舞われてきたものです。
宮城県では剣舞は鹿踊と対になって伝承されている場合が多いです。剣舞は悪魔払、疫病除け、虫除けを祈願したもので、念仏踊りが変化したものと言われます。


3.4 その他
その他、宮城県には登米能と呼ばれる能や、小迫延年という延年等様々な芸能が伝承されています。


3.5 雀踊り
雀踊りは、仙台城築城の際に石工が伊達正宗公の前で踊った踊りが発祥とされ、瀬田谷不動尊で伝承されていた舞手が跳ねるように踊っていたと言う神楽をもとにした踊りといわれます。
昭和36年から仙台第一中学校で授業の一つとして扱われていましたが、平成元年からは現代風にアレンジされ「青葉祭り」の中心的な踊りとして現在では仙台市民の新しい民俗芸能として定着してきています。


中新田火伏せの虎舞(加美町)


早稲谷鹿踊(気仙沼市)

 
小迫延年(栗原市)
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